卒業研究成果の紹介(1回目)2017年03月14日

本年度の卒業研究の成果を紹介していきたいと思います。

1回目は、尾形結子さんによる「マナマコ種苗に対するマコンブの仮根部粉末の最適給餌量に関する研究」です。

【目的】近年,北海道産マナマコに対する需要の増加から人工採苗放流による資源増大が求められている。しかし,稚ナマコの餌料に用いられてきたリビックBWが東日本大震災により製造中止となったことに伴って代替餌料の開発が課題となっている。こうした中,マコンブSaccharina japonicaの仮根部(以下,ガニアシと表記)の粉末がマナマコの初期餌料として有効であることが報告されている。そこで,本研究では,稚ナマコに対するガニアシ粉末の最適給餌量を飼育実験により体サイズ別に検討した。

【材料と方法】本実験では餌料として北海道福島産養殖マコンブの生産過程で廃棄された乾燥ガニアシを粒径125µm以下に調整した粉末を使用し,これを1日あたり0.15,0.3,0.45,0.6および0.75g給餌する5つの餌料区を設定した。各給餌区には15L角型水槽を各々5基(計25基)割り当て,これらを水温15℃のウォーターバスに配置した。供試個体には北海道留萌産の親個体から人工採苗したマナマコを使用し,実験Ⅰとして2015年採苗の平均体長20.4mmの稚ナマコ200個体,実験Ⅱとして2016年採苗の平均体長11.5mmの稚ナマコ250個体を上述の25基の水槽にそれぞれ8および10個体ずつ収容後,毎日給餌するとともに2日間隔で全量換水しながら62日間飼育した。飼育中は原則として2週間ごとに生残数,体長,体幅および湿重量を計測するとともに,Yamana & Hamanoの式を用いて標準体長を算出したほか,水槽ごとに標準体長増加率LR(=[Le−Ls]×100/Ls),日間伸長率LD(=ln [Le−Ls]×100/t),体重増加率WR(=[We−Ws]×100/Ws)および日間増重率WD(=ln [We−Ws]×100/t)を求めた。ただし,Lsは開始時標準体長,Leは終了時標準体長,Wsは開始時湿重量,Weは終了時湿重量,tは飼育日数である。

【結果と考察】実験終了時の生残率は,実験ⅠおよびⅡとも92~100%の範囲にあり,大差はなかった。実験Ⅰの体長では0.75g区のLRが0.15g区よりも高く,体重では0.6g区と0.75g区のWRとWDが0.15g区よりも高い値を示した。実験Ⅱの体長では0.6g区のLRが0.15g区よりも高く,体重では実験Ⅰと同様,0.6g区と0.75g区のWRとWDが0.15g区よりも高い値を示した。このことから,最適給餌量は,実験Ⅰでは0.6g/日,1個体あたりに換算すると75mg/日となり,実験Ⅱでも実験Ⅰと同様に0.6g/日,1個体あたりでは60mg/日となった。これより,体長11.5~20.4mmの稚ナマコに対するガニアシ粉末の最適給餌量は60~75mg/日/個体と考えられた。なお,マナマコの成長に関しては餌料中の粗蛋白質割合が重要とされているため,上述のガニアシ粉末の最適給餌量を粗蛋白質量に換算した結果,6.8~8.5mg/日/個体となった。


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