臨海実験所留萌支所報告会 ― 2018年02月27日

臨海実験所留萌支所の成果報告会を開催しました。
この報告会は、毎年、留萌市役所と東海大学および公立はこだて未来大学が合同で開催しており、2大学が各々留萌市役所と共同で行っている研究成果を地元の漁業者や役所、関係団体に報告するものです。
本年度は時間が限られていることもあり、私が代表してマナマコ中間育成への取組について報告しました。



臨海実験所報告会 ― 2018年02月20日

本年度も寿都町において臨海実験所を活用した研究の成果報告会を開催しました。
今回の発表会では、研究テーマが多岐にわたっていたにもかかわらず、多くの出席者から各テーマの有機的なつながりを意識したご意見をいただきました。

とりわけ、寿都町沿岸では大型海藻が生えないことにより漁業生産の低迷が続く磯焼け現象が深刻な問題となっている中で、1)稚魚類の生物生産の向上策として藻場造成だけでなく落ち葉堆積場の保全や整備が重要になることや、2)磯焼けの持続要因としてキタムラサキウニに並んでクボガイやコシダカガンガラの海藻に対する摂食圧が無視できなく、これらの食用利用を通じて磯焼けの緩和を考えるべきであること、さらには、3)ヨコエビ類の生産性の高さを今後も維持していく上で必要な環境条件を明らかにすべきであることなどは特筆に値するご意見でした。
今回の討論を踏まえ、当臨海実験所では今後も地域連携による課題解決に取り組んでいきたいと考えております。

また、今回参加した4年生も討論を通じて自分たちが取り組んだ研究成果が地域の問題解決につながっていることを認識できたのではないかと思います。
今後も本学が地域産業の活性化に貢献すべく、成果報告会を続けていきたいと考えております。





新技術説明会 ― 2017年04月21日

昨年11月に行われた新技術説明会(JST主催)でのプレゼン内容がYouTubeにアップされました。
30分近い動画ですが、ご笑覧いただければ幸いです。

https://www.youtube.com/watch?v=TcpnueHkC4A&feature=share

卒業研究成果の紹介(8回目) ― 2017年04月11日

8回目は、笹栗朋華さんによる「北海道苫小牧におけるウバガイの生殖周期の年変化に関する研究」です。

【目的】
 北海道苫小牧は国内第1位のウバガイ漁獲量を誇っているが,本種の推定資源量は1994年をピークに減少傾向にある。また,当海域ではウバガイの次期加入群の資源量も減少しており,漁業者は不安を抱いている。こうしたウバガイの資源量減少の主な原因として,浮遊幼生や底生稚貝の生残率低下に加えて,親貝の成熟や放卵・放精に何らかの問題が生じている可能性が疑われる。そこで,本研究では苫小牧沿岸に生息するウバガイの生殖巣発達過程を3年間にわたって調べ,その年変化と当年貝の発生状況の関係を検討した。

【材料と方法】
 2014年4月~2015年9月および2016年3月~9月に苫小牧西部海域において月に1回,殻長90mm以上のウバガイを操業用桁曳網で採集した。採集した30個体から生殖巣と内臓塊を取り出し,それらを合わせた重量を生殖巣重量として生殖巣指数を算出した。切り出した生殖巣をパラフィン包埋し,厚さ6μmの組織切片を作成した後,マイヤーの酸性ヘマラウランとエオシンで二重染色を施すことにより生殖巣の発達過程の組織学的観察を行った。

【結果】
 ウバガイ生殖細胞の分類に準じて,生殖巣発達過程を回復期,成長前期,成長後期,成熟期,放出期および放出終了期の6段階に区分した結果,2014年および2016年の放出期は雌雄ともにそれぞれ6月~7月および5月~7月に認められたが,2015年の放出期は雌が5月~7月,雄が4~7月に確認された。また,生殖巣指数は,2014年は雌雄ともに5月にピークに達したが,2015年は雄が4月,雌が5月にピークとなったほか,2016年は雌雄とも4月にピークを迎えたが,雌のピーク値は同年の雄や他の年に比べて低い値となった。

【考察】
 本研究の結果,2014年,2015年および2016年においてウバガイの生殖巣発達過程には差異がみられ,2014年と2016年は雌雄の成熟期と放出期が一致したが,2015年は雄が雌より約1か月早く成熟するとともに,放精を行っていた。また,2016年はピーク時における雌の生殖巣指数が同年の雄や他の年より低い値を示した。これらのことから,2014年は雌雄の放卵・放精が同調し,受精に支障が出なかったこと,2015年は雌雄の放卵・放精が同調する期間の短縮により受精の機会が低下したこと,2016年は雌の産卵量減少に伴って受精卵の量が減ったことが示唆された。さらに,今回の採集場所近傍で調査したウバガイ当年発生貝の分布密度をみると,2014年は当年貝の発生が比較的高い水準で確認されたのに対し,2015年と2016年は当年貝がほとんど採集されず,本研究の結果から推測される2014年の受精機会の増加と2015年および2016年の受精機会の低下に対して矛盾しないことから,当該海域におけるウバガイの稚貝発生量の年変動には親貝の生殖周期や生殖巣指数の値の年変化が影響している可能性が示唆された。


卒業研究成果の紹介(7回目) ― 2017年04月01日

7回目は、楊彩嘉さんによる「イシダタミMonodonta confusaの生活年周期と海藻群落の形成に及ぼす影響評価に関する研究」です。

【目的】
 北海道日本海南西部沿岸ではキタムラサキウニの摂餌活動による磯焼け現象が深刻化している。一方,三陸沿岸ではエゾサンショウやエゾチグサなどの植食性小型巻貝の摂餌活動が海藻群落の形成に影響を及ぼしていることが指摘されている。植食性巻貝は北海道南西部沿岸の磯焼け地帯でも高密度に分布し,当該沿岸の海藻群落形成に何らかの影響があると考えられる。そこで,当該沿岸で優占するイシダタミが海藻群落の形成に及ぼす影響を評価する研究の一環として,本種の生活年周期を明らかにすることを目的とした。

【材料と方法】
 本研究は,北海道寿都町矢追沿岸の磯焼けが発生している岩礁潮間帯を調査の対象とした。2015年12月から2016年11月の間に月1回の間隔で上述の岩礁帯において無作為に30個体のイシダタミを徒手採捕した後,10%ホルマリン海水で固定した。固定したイシダタミについては,水道水を掛け流しした容器で十分に濯いだ後,殻径をノギスにより1/10mmの精度で測定した。また,電子天秤を用いて全重量,軟体部重量および内臓塊重量を1/10gの精度,消化管重量を1/10000gの精度で測定するとともに,消化管重量から消化管内容指数の算出を行った。その後,生殖巣および中腸線を摘出し,通常のパラフィン法により5~8µmの連続組織切片を作成した。これにマイヤーのヘマラウンとエオシンで二重染色し,組織学的観察を行った。さらに,摘出した消化管内容物を生物顕微鏡で観察・撮影した。なお,調査地の水温環境を把握するため,2016年2月から11月にかけて,自記水温計(HOBO Pendant. Onset)を設置し,水温を10分間隔で観測した。

【結果と考察】
 寿都町におけるイシダタミの生殖巣の発達過程は,雌雄とも12~2月は回復期に属し,雌では2~5月,雄では3~4月に成長期に移行した後,5月の成熟期を経て,6~10月には放出期に達することが示された。したがって,本種の繁殖期は雌雄とも6~10月の年1回と推察された。また,イシダタミの生殖巣指数は雌雄ともに7月をピークに迎え,その後は急激に減少した。このことから,本種の放卵放精は,先述のように生殖巣の組織学的観察では6~10月に放出期を迎えることが示されたが,その盛期は7~8月の夏季であることが考えられた。なお,生殖巣指数が雌雄ともに上昇した3~7月は,水温が4.8~19.7℃に上昇する時期にあった。また,生殖巣指数が減少に転じた7~8月は当該海域において水温がピークに達する時期と重なっており,水温上昇が本種の生殖巣発達や放卵放精に関与していることが窺われた。一方,本種の消化管から検出された内容物の多くは珪藻類であり,次いで大型藻類類の配偶体や微小胞子体を含む小片が多く,その他にも砂粒が含まれていた。また, 配偶体や微小胞子体を最も高い割合で摂餌していた月は6月および10月であったことから,イシダタミは,両月に出現するフシスジモク幼胚や小型紅藻類の胞子体を食害している可能性が示唆され,寿都町矢追沿岸における海藻群落の形成に何らかの影響を与えていることが推察された。


卒業研究成果の紹介(6回目) ― 2017年03月28日

6回目は、中川雄太君による「北海道朱太川河口に生息する稚魚類の食性に関する研究」です。

【目的】
 河口域は河川水の流入と海水の溯上に伴う塩分濃度の変化や砂泥供給により特異的な環境を形成することから、河口域に生息する生物は、塩分変化や地形と密接な関係を持つと考えられている。また、河口域は水産上有用な海産魚類や遡河回遊性魚類が生活史初期を過ごす成育場として機能している。稚魚類が河口域を成育場として利用することで得られる利点は、捕食者が少ないことによる高生残と豊富な食物供給による高成長の2点であり、仙台湾名取川河口域や櫛田川河口域では稚魚類の食性が報告されている。しかし、北海道を含む亜寒帯地方の河口域では稚魚類の食性に関する知見はほとんどない。そこで、本研究では、北海道日本海南西部に位置する寿都朱太川河口域を対象として、稚魚類の食性解析をするとともに、隣接するガラモ場における稚魚との比較を行った。

【材料と方法】
 2016年6月,7月,8月および9月の計4回、北海道日本海南西部沿岸に面する寿都町を流れる朱太川河口域において地曳網を用いて稚魚の採集を行った。採集された稚魚を同定した後,全長および体重(湿重量)を計測した。その後、消化管を摘出し,重量を計測後,胃内容物を実体顕微鏡下で科のレベルまで同定し,科ごとに個体数と湿重量を計測した。稚魚の食性解析として相対重要度指数IRIを用いたクラスター分析を行ったほか、肥満度CFおよび胃内容物重量指数SCIを求めた。

【結果】
 各調査月に採集された魚種は調査期間を通して12種505個体であった。各月において最も多く採集された魚種は、6月がマイワシSardinops melanostictusの7個体、7月および9月がマフグTakifugu porphyreusのそれぞれ76および41個体、8月がウキゴリGymnogobius urotaeniaの133個体であった。IRIを用いたクラスター分析を行った結果、稚魚の食性パターンは、A)底生性のモクズヨコエビHyale grandicornis、B)肉食性端脚類のメリタヨコエビ科の一種Melita sp.、C)浮遊性のイサザアミ属の一種Neomysis sp.、D)消化物の4つのグループに分けることができた。また、CFおよびSCIには調査期間を通して変化がみられ、7月が特に高い値を示した。

【考察】
 朱太川河口域において出現する稚魚とその食性について調べた結果、降海したウキゴリとウグイTribolodon hakonensis、砂地を利用するネズミゴチとマフグ、回遊で一時的に来遊したマイワシや繁殖期を迎えたヨウジウオSyngnathus schlegeliが生息するとともに、これらは底生動物やプランクトンを摂餌していることが明らかになった。また、隣接するガラモ場における稚魚類の結果と比較したところ、河口域とは出現時期が異なったチカHypomesus japonicusとヨウジウオが季節に応じて生活場所を変えていることが推察された。さらに、CFやSCIの結果から朱太川河口域では調査期間を通して7月が最も稚魚類にとって成育に適した時期であることが示唆された。今後は、四季を通して朱太川河口域に出現する稚魚群の解析を行うことにより季節間の変化や環境中に存在する餌生物を検討し、河口域における稚魚群の摂餌生態を総合的に究明する必要がある。


卒業研究成果の紹介(5回目) ― 2017年03月26日

5回目は、白戸遼司君による「北海道寿都漁港周辺のガラモ場に生息する稚魚類の食性に関する研究」です。

【目的】
 ホンダワラ類を主体とした海藻群落によって形成されるガラモ場は,魚類に対して葉上に生息する小動物を餌料として供給する餌場機能や,藻体が創り出す複雑な立体構造により捕食者からの逃避場所を提供する隠れ場機能を有しており,水産資源を含む海産魚介類の成育場として重要な役割を果たしている。このため,北海道では,魚類の産卵・成育場整備を目的としたガラモ場造成技術開発が進められ,これまでに造成適地の選定手法やフシスジモクの着生に適した基質条件が明らかにされてきた。一方,ガラモ場の生態学的機能については,カサゴ目稚仔魚の成育場としての役割に関する研究が国内外で行われているが,多種で構成される魚類群集が各々の生活史の中でガラモ場の資源をどのように利用しているのかといった資源利用の実態,とりわけ餌料をめぐる種間・種内競争や資源分割といった群集生態学的な視点での研究についてはほとんど行われていない。そこで,本研究では,北海道日本海南西部に位置する寿都漁港周辺のガラモ場を対象として,稚魚類の食性を解析するとともに,ガラモ場に生息している葉上動物との関係を検討した。

【材料と方法】
 北海道寿都漁港の外郭施設周辺に形成されているガラモ場を対象に,2016年2月,3月,5月,6月,7月,9月および11月の計7回,地曳網による魚類採集を行った。採集した魚類の全長,湿重量,消化管重量および胃内容物重量を計測した後,胃内容物を実体顕微鏡下で科のレベルまで同定するとともに,科ごとに個体数および湿重量を計測した。

【結果と考察】
 本研究では調査期間を通してシロサケ,ウグイ,ハナジロガジおよびチカを含む22種653個体の稚魚類が採集された。このうち,各月で最も採集された魚種は2月がサケ,5月がカズナギ,6月がハナジロガジ,7月がウグイ,9月チカおよび11月がアゴハゼであった。そこで各月において胃内容物が未消化物として検出された10魚種について食性解析を行った。胃内容物中に出現した科別の餌生物について相対的な重要度を表す相対重要度指数IRIを算出した後,IRIを基にクラスター分析を行った結果,ハルパクチクス目のカイアシ類を主食していたグループ,タナイス科の一種を主食していたグループおよびドロクダムシ科の一種を主食していたグループに区分された。また,肥満度CFおよび胃内容物重量指数SCI を算出した結果,カズナギにおいて時間経過に伴う肥満度の上昇と満腹度の低下がみられた。さらに選択性指数E*を算出した結果,カズナギは選択的に好みの餌生物を摂食しつつも,環境中に多産する餌生物も摂食していることが示された。以上の結果から,カズナギなどの周年定住種はウミタナゴなどの季節定住種の出現によって餌をめぐる競争が生じた結果,十分に摂食できなくなり,満腹度が低下したものと推察された。また,タナイス科の一種は繁殖期の6月~7月に,雄が離巣することによって稚魚に捕食されやすくなっていることが示唆された。今後は,周年定住種と季節定住種の餌生物をめぐる競争関係の詳細を明らかにすることが必要である。


卒業研究成果の紹介(4回目) ― 2017年03月23日

4回目は、松ヶ崎光悦君による「北海道寿都湾におけるホタテガイ養殖場の環境評価に関する研究Ⅱ」です。

【目的】海面養殖業では,飼育個体の残餌や排泄物に起因した有機物負荷により底層の貧酸素化や硫化水素の発生が問題視されている。北海道寿都湾ではホタテガイ養殖の開始から2014年までの約50年間,底質環境に関する調査は行われてこなかったが, 2015年夏季に養殖場内外において底質性状とマクロベントス群集の比較が実施され,底質環境の劣化が認められないことが示されたところである。そこで,本研究では,昨年度に引き続き当該海域において底質環境の調査を実施し,経年変化の観点から環境評価を行った。

【材料と方法】2016年9月16日に北海道寿都湾のホタテガイ養殖場において,底質およびマクロベントスの採集を行った。養殖場内の水深20~35mおよび養殖場外の水深25~40mの範囲に5m間隔で計8地点を設定し,スミス・マッキンタイヤー型採泥器を用いて,1地点当たり2回の採泥を行った。採集した底泥から底質分析用試料を採取した後,残りを篩に掛け,残留物を5%ホルマリン海水で固定した。その後,マクロベントス群集構造を解析するため,地点間の類似度指数としてBray-Curtis指数を算出し,この値に基づいたMountfordの平均連結法によるクラスター分析を行ったほか,Shannon-Weaner関数による多様度指数H’ を求めた。底質分析用試料については,有機物量の指標として強熱減量を分析するとともに,ふるい分け法により中央粒径,淘汰度および泥分率を算出した。また,H2S検知管を用いて酸揮発性硫化物量を計測した。さらに,各調査地点の理化学的性状と地形的特徴の関係を検討するため主成分分析を行った。

【結果と考察】強熱減量は,養殖場内では3.1~4.8%,養殖場外では3.2~6.1%の範囲にあり,水深25mでは養殖場外が有意に高く,水深30mと35mでは養殖場内が有意に高かった。また,昨年度との同地点における比較では,本年度は養殖場内の水深35mの値が昨年度に比べて有意に低かった。酸揮発性硫化物量は,全地点において検出されなかった。中央粒径は,養殖場内では0.11~0.17mm,養殖場外では0.09~0.14mmの範囲にあり,養殖場内の中央粒径が養殖場外の値に比べて高いことが示された。淘汰度は,養殖場内では0.58~0.72,養殖場外では0.60~0.81の範囲にあり,昨年度および本年度とも,養殖場外の淘汰度が養殖場内の値に比べて高いことが示された。泥分率は,養殖場内では1.5~5.5%,養殖場外では4.4~9.5%の範囲にあり,昨年度および本年度とも養殖場外の泥分率が養殖場内に比べて高いことが示された。各調査地点の中央粒径,淘汰度,強熱減量,距岸距離および水深を用いて主成分分析を行った結果,養殖場内は強い流動と遠い距岸距離,養殖場外は弱い流動と近い距岸距離で特徴付けられた。一方,マクロベントスは5動物門38種採集され,汚染指標種は確認されなかった。また,クラスター解析により区分された二枚貝および多毛類を主体とする2つの群集は,それぞれ湾口部の沿岸流の影響を受ける地点および湾奥部の静穏な環境下にある地点に含まれるとともに,群集構造は流動の年変動の影響を受けることが示唆された。


卒業研究成果の紹介(3回目) ― 2017年03月16日

3回目は、麻畠梨沙さんによる「空気ポケットフェンスを用いたマナマコの中間育成施設に関する研究」です。

【目的】日本に広く分布しているマナマコは,北海道でも沿岸域の重要な漁業対象種とされ,全国の漁獲量に占める割合も高い水準を維持している。道内各地において本種の人工種苗生産や放流が行われているが,本種は放流個体の追跡方法が確立されていないため,放流効果の検証も困難な状況にある。一方,ウニ類では移動を妨げる施設として空気ポケットフェンス技術が開発されており,マナマコにおいても室内での模型実験(久野,未発表)のほか,実海域においても体長4.5mmのマナマコ種苗の移動抑制効果が実証された(山田ら,2016)。そこで,空気ポケットフェンスを付帯した試験施設に大型種苗を収容し,更なる生残率の向上を見込むことができるか否かを検証するための実験を行った。

【材料と方法】本研究は、北海道日本海南西部に面する古平漁港内で実施した。使用した試験施設は、方形状の箱型を呈しており、これに空気層を保持するためのポケットを内外に設けた構造となっている。また、施設内の底面には種苗の着底基質として裁断したヘチマロン40枚を敷き詰めた。本研究は,試験施設2基(それぞれA礁・B礁と表記)のポケット内に空気を充填した状態で行った。A礁には2014年7月に水槽実験室で種苗生産し,同年11月~2015年11月まで当該施設で育成された体長25.9±8.9mm(平均値±標準偏差;以下同様に表記)の稚ナマコ487個体を2015年10月19日~2016年10月18日まで収容した。また,B礁には2015年6月に北海道栽培漁業振興公社で種苗生産した体長19.5±4.0mmの稚ナマコ2000個体を2015年11月23日~2016年10月25日まで収容した。収容後の追跡調査については1か月間隔でA・B礁を交互に計6回行った。追跡調査では施設内に調査定点を設け潜水によりヘチマロンを陸上げした後,個体数と体長・体幅を計測した。

【結果】A礁およびB礁に収容した稚ナマコは,回収時にはそれぞれ体長41.4±17.7mmおよび35.4±13.6mmとなった。また,A礁・B礁とも収容後から時間経過に伴って施設中心部から壁に向かって減耗しながら分散していく様子が観察された。さらに,収容個体数を100%とした回収個体数の割合を生残率として求めた結果,収容から約1年でA礁では346個体回収され,生残率は71.0%となった。B礁では249個体回収され,生残率は12.5%と算出された。

【考察】本研究では半閉鎖的な施設に稚ナマコを約1年収容した結果,体長はA礁で収容時の1.6倍,B礁で収容時の2.7倍となり,生残率はA礁で71.0%,B礁で12.5%となった。この結果は,酒井(2015)が行った漁港内における13mm種苗の6か月間の生残率(=0.7%)に比べて著しく高い値となった。しかし,山田ら(2016)の実験では,当施設に小型種苗(4.5mm)を収容した時の生残率が16.8%であったのに対し,本研究では大型種苗(19.5mm)を収容したにもかかわらず12.5%と低く,生残率は種苗のサイズ以外の要因にも影響されることが示唆された。


卒業研究成果の紹介(2回目) ― 2017年03月15日

2回目は、山本達之介君による「マナマコに対するマコンブ仮根部粉末の給餌形態に関する研究」です。

【目的】東日本大震災により製造中止となったリビックBWに替わりマコンブSaccharina japonicaの仮根部(以下,ガニアシと表記)の粉末がマナマコの初期餌料として有効であることが昨年度の五十嵐の研究により明らかとなった。一方,現状のマナマコ種苗生産では粉末状の飼料が使用されているが,個体間の成長差が大きいことが問題となっており,その改善に向けた給餌法の確立が課題となっている。こうした中,海藻粉末に海泥などの鉱物質を添加した飼料や海藻粉末に鉱物質を加えた上でフロック状に加工した飼料を給餌することにより,マナマコの成長促進が図られることが報告される。そこで本研究では,ガニアシ粉末に鉱物質の添加やフロック化を施した飼料をマナマコに与える飼育実験を実施し,本種の成長に適した給餌形態を検討した。

【材料と方法】本研究では北海道福島産養殖マコンブの生産過程で廃棄された乾燥ガニアシを添加した飼料のほか,これらを鵜沼ら(2013)に準拠してフロック化した飼料を使用した。試験区としてガニアシ粉末単独の飼料,粉末に鉱物質を添加した4つの区(それぞれA区,B区,C区,D区と表記)を設定するとともに,各区には15L角型水槽を各々3基(計12基)割り当て,これらを水温15~16℃のガラス水槽に配置した。供試個体には北海道留萌産の親個体から2016年に人工採苗した体長15mm前後のマナマコ120個体を使用し,これらを上述の12基の水槽に10個体ずつ収容後,2日間隔で全量換水と給餌を行いながら54日間飼育した。実験開始時,17日目,32日目および実験終了時に飼育個体の生存数,体長および体幅を計測するとともに,Yamana&Hamanoの式を用いて標準体長Lを算出したほか,水槽ごとに標準体長増加率LR(=[Le-Ls]×100/Ls)および日間伸長率LD(=ln[Le-Ls]×100/t)を求めた。ただし,Lsは開始時標準体長,Leは終了時標準体長およびtは飼育日数である。

【結果と考察】実験期間中,A,CおよびD区では生存率が100%を推移したが,B区では1個体が消失することにより生存率は90%となった。LはB区が最も高く38.3±9.9mmとなった。LRは値が最も高いB区(98.7±18.4%)と最も低いC区(69.9±12.0%)の間に有意差が認められた(p<0.05)。日間伸長率は,B区(1.6±0.1%/日),D区(1.3±0.0%/日),A区(1.2±0.1%/日),C区(1.0±0.0%/日)の順で高く,B区とC区の間に有意差が検出された(p<0.05)。このように,粉末状の飼料を与えた A区とB区ではそれぞれ同じ原料をフロック化したC区とD区よりも成長率が高くなったことから,体長15mm前後のマナマコでは粉末状のまま給餌する形態が好ましいと考えられた。また,鉱物質を添加したB区とD区ではそれぞれ形態が同じで粉末単独のA区とC区よりも成長率が高い値を示したことから鉱物質の添加はマナマコの成育に効果的であると推察された。